広島高等裁判所松江支部 昭和25年(う)179号 判決
原審決挙示の証拠を綜合すれば、被告人は原判示選挙に際し原判示候補者北条秀一に当選を得させる目的で選挙運動の為法定外の文書である同候補者の氏名略歴業績等を印刷した文書を原判示の如く領布した事実を認めるに充分である。而して、刑法第三十五条に所謂正当なる業務に因る行為とは法令の定むる所、慣習の認むる所又は条理の命ずる所に従い適当なる業務の執行と認めらるべき行為を指称するものであるから、たとえ、被告人が所論の如く鳥取県海外引揚者更生協会事務局長の地位にありその職責は引揚者団体全国連合会等から送付された文書その他を忠実に理事その他の役員に伝達すべく、自己の判断で伝達すべきか否かを取捨選択することは許されていないとするも、いやしくも、その職務の執行に当り特定の議員候補者に当選を得させる目的で選挙運動の為法定外の文書である該議員候補者の氏名略歴業績等を印刷した文書を領布するが如きは選挙の公正を害するに至るから、これを事務局長として正当なる業務行為ということはできない。されば、原判決が被告人の原判示所為に対し公職選挙法第百四十六条第三百四十三条を適用処断したのは正当で、所論のような事実誤認又は法令の適用を誤つた違法はない。
(註。本件は量刑不当により破棄自判)